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by inja369

タクシードライバーは客が多いとサボる?:「目標仮説」を理解する

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タクシーの利用率は、天候やイベントの有無によって日ごとに変わってくる。乗客が多い日は、利用者も捕まえやすく、短時間で多く売り上げることができる「効率のいい日」であるはずだ。しかし実際は、乗客の多い日は運転手は早めに仕事を切り上げてしまうのだ。

なぜなのだろうか。その理由は行動経済学が説明している。

目標以上の結果は出さない?

hatenablog.com.injabooks.jp

この記事では、人は買い物をするときに無意識に自分の経済力に合わせて予算を決めていて、それ以上の支出をしようとしない。だから普段買えないような贅沢品をプレゼントすると喜ばれることを説明した。

予算は、「最低でもこれだけは我慢する」という、我慢の目標設定とも捉えることもできる。この目標設定は厄介なもので、人は目標を決めてしまうと、「目標は達成したし、もういいや」と考えて、それ以上の成果を出そうという心理が働きにくくなる。目標を設定することは仕事の最低ラインを決められるという意味で有意義だが、一方でそれ以上の結果を出すモチベーションが上がらなくなるというリスクもあるのだ。

目標設定もいいことずくめではない

タクシー運転手がサボる理由をこれで説明できる。運転手は、その日ごとに売り上げのノルマを自分に課していることが多い。このノルマは、乗客が多い日には早く達成されてしまう。すると、「もうノルマは達成したし、仕事を切り上げても文句は言われないよね」という心理が働き、サボったり、仕事を終えたりしてしまうのである。逆に、乗客の少ない日はなかなかノルマを達成できないゆえに、長時間働くことになる傾向があるのだ。

タクシードライバーは勤務時間を選ぶことができる。効率良く稼げるうちに長時間働けば、高い売り上げを出すことができ、過去や将来にあるであろう売り上げが低い日のぶんをカバーできると考えるのが合理的と思われる。しかし、実際の人間はそのようには動かないようである。

良くも悪くも、人は目標に忠実であろうとする。これを「目標仮説」と言う。

 

競馬場の例

この「目標仮説」は、競馬場や先物取引市場、株式市場についてもあてはまる。例えば競馬の場合、レースの始めのほうに損をした人は、最後のほうに出てくる、当たる確率は低いが儲けは高い、いわゆる「大穴」に賭ける確率が高くなるのだ。

これは、その日に儲けたい金額を予め設定しているので、その目標が達成されない可能性が高くなると、なんとしても目標を達成したいという心理が働いて、危険な賭けに出る、ということなのだ。

損を出してしまったときは大人しく撤退して被害を最小限にし、改めてチャンスを伺うというのが合理的な判断と思われるが、なかなかそう考えるのも難しいようだ。タクシー運転手と同じで、目標に忠実なのである。